東京都調査業協会

探偵コラム

第77回:《探偵》1つの状況証拠だけでは「証拠」にならないのを知っていますか?

探偵に一度も依頼をしたことのない人にとって、探偵業界は未知の世界です。しかも、悪い噂を聞くこともありますし、何となく後ろ暗いイメージを持っている人もいます。

全員が全員、悪い人とは限らなくても、有象無象の中で本当に自分が、ちゃんと依頼をしてくれる人を見つけられるのかが不安な人もいるでしょう。

いえ、もしかすると、お願いしたいと思っていても、誰かに自分の悩みを相談することで、それが誰かから漏れてしまい、噂となって広がってしまう可能性を考える人がいるかもしれませんし、相談をした探偵に強請られたらとネガティブな考えを持つ方もいるかもしれません。

それなら、自分で調査をすればいいんじゃないか、と考え着く人も中にはいます。

確かに、自分で調査をするのであれば、悪い探偵か良い探偵かなんていうことを考えなくてもいいですし、高い料金を払う必要もありません。

人目を気にしている人であれば、自分が探偵事務所に出入りしているところを、誰かに見られることもありません。

一見すると、いいことづくしです。

でも、探偵のことをよくわかっていない人は、探偵がどんな調査をして、どういう証拠をつかんできてくれるのか、ということも知りません。

もし、1度でもまともな探偵に依頼をしたことのある人であれば、探偵の調査能力の高さや細やかで正確な証拠(報告書)を見て、これは真似できないと思うでしょう。

確かに探偵事務所に依頼をして調査をしてもらうのには、安くはないお金が必要です。ですが、1度調査のお願いをした依頼人は、リピートをする人も少なくはありません。

他の業界であれば、1度はプロにお願いをして、その次からはプロがしていたことを真似して自分でやってみようと思う人もいますが、探偵の仕事を見た人は素人ではこんな風には出来ないと悟ります。

繰り返しますが、探偵に依頼をしたことのない人は、探偵がどんな証拠を渡してくれるのかを知らないので、自分で何とかできると思ってしまうところに問題があります。

例えば、最近の夫の様子がおかしいので、浮気をしているかもしれないと思った妻がいたとします。白黒はっきりさせたいと思うものの、本人に聞いてもはぐらかされると思い、家での夫の様子を探ることにしました。

ある日、夫のスマートフォンに電話がかかり、夫が慌ててベランダに出てしまったので、ピンときた妻は後を追って、こっそり会話を聞くことに。

最近は聞かないような夫の甘えた声にイラッとしたものの、どうやら夫は来週の金曜日に、電話の相手と会う約束をしているようでした。

浮気を確信した妻は、探偵に依頼をしようかとも思いましたが、以前テレビで見たバラエティ番組を思いだし、自分で尾行調査をしてみることにしたのです。

カメラを持っていませんでしたが、最近は2、3万ぐらいのコンパクトカメラでも高性能なものがあるので、素人でも手振れをおこさずに写真を撮れます。

そして尾行当日。

慣れない尾行をする妻に対して、周りからの視線は気になりましたが、夜の繁華街ということもあり、無事に夫と愛人が待ち合わせをしているところを写真に収めることができました。

その2人の姿を見た時に、浮気の証拠を突きつけて、自分を裏切った夫とはきっぱり別れようと妻は決意します。

始めは仲良さそうに食事をしている2人を見ているだけで、イライラしていましたが、だんだんと無の境地になりました。そして、テレビで「浮気の証拠は、食事をしているところだけではなく、ホテルに入るところを取る必要がある」ということを思いだし、そのまま尾行を続行します。

自分でも驚くほど冷静に、夫と浮気相手の尾行を続け、ついにホテルに入っていく姿を写真に収めたのです。

妻は、その写真を証拠にして、夫に離婚を伝え慰謝料を請求しましたが、残念ながら妻が尾行して撮った写真では証拠不十分とされ、妻の意見は通りませんでした。しかも、夫は妻には一銭も払わずに別れ、その半年後、浮気相手と結婚したということを風の噂を聞いたと言います。

一体、何がだめだったのでしょうか?

妻が撮った写真は、素人にしては綺麗に撮影されていましたし、ホテルの場所は特定できませんでしたが、ラブホテルに腕を組んで入っていく夫と愛人の姿も、しっかりと撮れています。写真を撮っている姿が、夫にばれてもいいと思っていたからこそ、かなり近づいて撮ったのでしょう。

なのに、夫についた弁護士に、証拠不十分と言いくるめられてしまったのです。

探偵に実際に依頼をしたことのない人のほとんど人が知らないのは、「言い逃れられない証拠」とは、どういうものなのかを知らないということです。

実は弁護士に入れ知恵をされた夫は、妻が出した写真に対して、こう言いました。

「この時は、たまたま彼女の調子が悪くなったから、安静できる場所で解放していただけだよ。中で僕は、テレビを見ていただけだし」

待ち合わせの所から、ずっと2人の後を尾行していた妻は、「そんなことはありえないと」言ったのですが、2人でホテルに入ったのが1度だけなら、それは「確実な証拠」とはいえないと言われてしまったのです。

そう、これが素人探偵ではわからないところです。探偵に浮気調査を依頼すると、報告書には2回以上対象者と愛人が、どこのホテルに入っていって、出て行ったのかということがしっかりと書かれています。

同じ相手と2度も、仲良さそうにホテルに入った写真があれば、「調子が悪くなって…」という言い逃れは出来ません。しかも、デートをしている2人の写真や言い逃れができない角度からのキスをしている写真も、報告書に入っていることがあります。

対象者についた弁護士も「ここまで決定的な写真があるなら、浮気を言い逃れできませんよ」と言うでしょう。

素人探偵は捨て身であれば、なかなかいい浮気写真を撮影できますが、2回目も同じ気持ちで浮気の証拠を取りに行くことができるかと言うと、難しいと言えます。

1度目はまぐれでできたことも、2度も同じまぐれはおきません。尾行の途中で対象者にバレたり、ピンボケの写真を撮るというのがオチでしょう。

素人探偵が失敗した後では、プロの探偵でも調査が難しくなることがあるので、真実を暴いて白黒つけたいというのであれば、探偵に依頼することをお勧めします。

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