東京都調査業協会

探偵コラム

第150回:《探偵》探偵ものの小説や映画が人気なのはなぜなのか

「探偵」という言葉を聞いて、初めに実在する探偵のことを思い浮かべる人は少ないように思います。昔からある、コナン・ドイルやアガサクリスティ、江戸川乱歩など誰でも知っている作家の探偵はとても魅力的で、読む人の心を掴んで離しません。

日本でも探偵が登場する小説や漫画は多数ありますし、ドラマや映画にもなることの多いジャンルです。推理ものとして人気が出ているのであれば、刑事ものや素人でもいいと思うのですが、なぜ探偵だけが、ありえない設定で使われているのでしょうか?

物語の中の探偵は、大抵殺人事件に関与しています。犯人を見つける存在であったり、犯人を見つけようとしている主人公とともに行動をして、実は犯人だったという場合もあります。こういった話が、多く作られるのは、刑事のような探偵の存在が「売れる」からです。

中にはもちろん、駄作と言われる「探偵もの」もありますが、ジャンルを確立するぐらいに「探偵もの」は乱立しています。もしかすると刑事ものよりも、探偵ものの方が数は多いかもしれません。

ではなぜ、探偵ものが、これほど人気なのでしょうか?

おそらく刑事ものよりも探偵ものの方が感情移入しやすいからだと思います。

刑事は実際に目で見ることができます。街のおまわりさんであれば、誰もが普段から目にしていますし、会話をすることもあるでしょう。それに見回りをしている刑事もいますし、職質をすることもあるので、日常の中でよく出会う職種の人です。そのため、制服を着ている刑事や制服を着ていない刑事の物語を見ても、自分とは全く違う人という認識を持ちます。

実物を知っているため、完全に想像力の中だけで作ることができないからです。もちろん、本職の刑事が刑事ものの物語を見れば、「こんなのウソだ」という個所は多数あると思いますが、実在する刑事を見ている人が多いため、簡単に自分がなれる存在ではないということが理解でき、傍観者として見ている人が多いのだと思います。

それに対して探偵はどうでしょうか?
令和の時代に入っても、まだまだ謎に包まれた存在です。探偵のことを知っているのは、探偵自身か探偵に依頼をしたことのある人だけでしょう。それ以外の人は、町を歩いていても「あ、探偵だ」とは思わないですし、普段からその存在を感じているわけではないので、架空の存在として見ています。

実際の探偵を知らないので、物語に出てくる探偵が本物かどうかはわかりません。それに物語に出てくる探偵は、推理力があるものの、一般の人がほとんどです。つまり、もしかしたら自分もなれるかもしれないキャラクターということです。

例えば、女性が恋愛ものが好きなのは、登場人物に自分を投影して、もしかしたら自分もこんな恋愛ができたかもしれないと感じたり、疑似恋愛としてドキドキを感じたりするために観ているという見方もできます。

男性の場合だと、ヒーローものでしょうか。流されてばかりの主人公がヒーローとして世界を救った、という物語もたくさんありますが、これも自分がヒーローになった気分を味わえているから観ているという見方もできます。

探偵ものも同じで、実際に探偵業界に入るのは怖いものの、物語としての登場人物に自分を投影することで、凄い存在になった自分を楽しんでいるのかもしれません。

ただ、平成に入り、本当の探偵は物語の探偵とは全く違う、浮気調査ばかりをしているんだというような声も大きくなりました。現実世界の探偵に目を向けられるようになったからでしょう。

それに、フィクションとノンフィクションは違うということを、誰もがわかっているのに、わざわざこんなにも違うんだ、俺はこれだけのことを知っているんだとマウントを取りたがるネット民が増えたのも要因の1つです。

それもあって、幻想の探偵ではなく現実の探偵に似せた物語を作り、そこから物語としての探偵を描くようなストーリーも生まれました。それが、いいのか悪いのかは特に判断をする必要はないと思いますが、そういう流れになったと言うだけです。

また、探偵自身もクローズドの世界ではなく、もっと一般に普及してほしいという気持ちから、自身でもホームページを作り始めたのも、探偵と接点のなかった人も気軽に探偵のことを知るようになったというところもあるでしょう。

探偵事務所は、昔は口コミと電話帳だけで集客を行なっていました。ですが、今の時代、電話帳を使っている人はほとんどいませんし、電話帳で探偵を探そうと考える人もほとんどいないでしょう。何でもかんでもネットで検索して、見つかったらメールをするという流れが浸透しているからです。だから探偵も電話帳に載せたり、電話帳の広告を買ったりするのをやめて、ホームページを作りブログを作り集客を始めたという背景があります。

ただこうやって時代が流れても、探偵ものは不動の人気があるジャンルです。実際に探偵になる人の中には、探偵ものの物語を観て探偵になった人もいますが、憧れだけで探偵になった人が、この業界から出ていく数はかなりのものだと聞きます。やはり現実と物語では違うのです。

探偵ものが映画や小説で人気が高いジャンルとして確立されていても、実際の職業として続けられる人はわずかしかいませんし、探偵に対する世間の評価も微妙なところもありますし、自分の職業を堂々と言えるかと聞かれた時に「はい」とは言いづらい部分もあります。物語の探偵は夢のある職業のように語られるからこそ、人々は探偵に憧れ、探偵ものの物語にはまるのでしょう。

ただ現実の探偵も、細かな調査を行い、依頼人に報告書を出した時に、本当に喜ばれる仕事であることには間違いありません。誰にも助けを求められなかった悩みを打ち明け、解決してくれるのですから、現実の探偵にもヒーローイズムはあります。何年、何十年と探偵をしている人であれば、自分の仕事に誇りを持っているでしょう。

自分のしていることに誇りを持っている人というのは、他人から見れば輝いている人です。そういった意味では、現実も物語も変わらないかもしれません。本当に困ったことが起きた時は、探偵のことを思い出してください。きっとお役に立てるはずです。

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